2022年度

令和4年度 福井県創作コンクール

概要

【審査日】令和4年9月13日(火)
【会場】福井県立羽水高等学校
【応募者】県下各高校に在籍している生徒
 随想の部:98名
 創作・評論の部:23名
 詩の部:32名
 短歌の部:45名
 俳句の部 :84名

審査員 20名(敬称略・順不同)



青山恭子(足羽) 井上陽介(北陸) 山元やよい(武生東) 松田淳子(奥越明成)
帰山 亨(科技) 渡辺理英(丸岡) 松田奈々(勝山) 長田嘉紀(三国)
髙橋 功(丹生) 増田典子(金津) 上山郁代(若狭東) 髙野修一(高志)
水嶋勝彦(武生) 酒井未来(坂井) 入羽美佳(武生商工) 宮内佐知子(鯖江)
佐藤拓也(大野) 嶺山秀法(藤島) 柿本隆哉(美方) 齊藤悦子(福商)

入賞作品【随想の部】



最優秀賞
光と共に 近江遥香(武生)
優秀賞
瞿曇悠生(敦賀)
澤田純怜(大野)
優しい嘘 齋藤美帆(武生商工)
優良賞
大味奈夕夏(金津)
誰かの光になるということ 西能凌哉(藤島)
思い出の夜空 近藤祐加(三国)
拡げ、受け継ぐ 松本実夕(鯖江)
牧野芙南(大野)
しくじりから 荒屋瑠奈(丸岡)

【選考評】
 随想部門のテーマは「しくじり」「攻」「続」「光」「拡げる」で、98編の応募があった。家族、兄弟、友人、部活動など身近な存在と関連づけて書かれているものが多かった。最優秀賞の武生高校、近江遥香さんの作品は、部活動で自分の手が日焼けしていく様が書かれており、最初は否定的にとらえていたものを徐々に前向きにとらえていく過程が巧みな文章構成で表現されていた。優秀賞の武生商工高校、齋藤美帆さんは家族の優しい嘘について、同じく大野高校、澤田純怜さんは祖母をとおしての死について、同じく敦賀高校、瞿曇悠生さんはスマホをとおした人間関係についてを描いており、それぞれの優しい心情が伝わってくる作品だった。自分の体験からその出来事だけを書くのでなく、その出来事をとおして考えを深めたり、社会に目を向け新たに自分の世界が広がったりしたことなどを表現する工夫をするとよい。

入賞作品【小説・文芸評論の部】



最優秀賞
マザー・ポイズン 加藤晴香(科学技術)
優秀賞
雨のち曇り、時々晴れ 加藤晴香(武生)
夏が死んだ 下野七緒(藤島)
二人下校 山本芽依(敦賀)
花言葉の友達 浅野 光(羽水)
優良賞
裏道ロマンス財団 萩原虎也(武生商工)
想い出の木の下でもう一度 山本愛理(丹生)
海にふたり 竹田知世(大野)
池中蓮太郎の死亡理由書 野路桃佳(科学技術)
ずっと一緒だよ 榎波瑠愛(福井商業)
考えすぎる人 山本彩禾(羽水)

【選考評】
 今年度は23作品が集まった。いずれの作品も「日常」に根ざした表現が多く見られた。舞台がいかに未来であっても、起こる事態や視点があまりに日常で目にするものにとどまっているところに、視野の狭さを感じた。より深く、ありえないからこそ、そこへ想像を隅々まで行き渡らせる力を持って欲しい。ひとつの作品を書き上げるための熱意や執念はどの作品にも強く感じられた。それ故に、よりいっそうの努力を期待したい。
 今年度最優秀に選ばれた「マザー・ポイズン」は母との問題を抱える少女の物語だ。少女は周囲と進路に悩み、悩みを持たないように見える学友達に苛立つ。だが、秀逸なのは、そうやって悩みが無いように見える学友にもそれぞれの状況があり、だからこそ考え方の違いが浮き彫りになるところである。
 「様々な悩みがある」言葉にすれば一言だが、それを本当に深く考えられる人は少ない。より本を読み、表現のみならず、考えを深めていくことを全体に勧めたい。

入賞作品【詩の部】



最優秀賞
マスク 山本遥奈(藤島)
優秀賞
言葉 後藤綺更(藤島)
白い紙 坪川 誉(藤島)
胸の奥 宮崎悠斗(大野)
優良賞
坂下柚月(武生)
まばたき 坂下碧泉(藤島)
二番手 志田愛斗(坂井)

【選考評】
 今年の詩の部は、32作品が集まった。それぞれの詩は、作者の感性が表れた内容になっており、自身の内面を吐露したものや、擬人的な内容にすることで、俯瞰的に物事を捉えたものなどがあった。中には、自身の創作した詩についての解釈をつけて応募する意欲的な作品もあった。
 最優秀賞の「マスク」はコロナ禍において必須となったマスクを題材として、学校生活においてもマスク着用を義務づけられ、相手の顔全体を見ることができなくなり、目で相手の心情を慮ることが多くなった。その中で、ふとマスクを外した相手に対して、普段見ることが出来ないマスクを外した素顔を見ることで、淡い恋心が芽生えたという高校生らしい青春を謳歌している内容であり、審査員満場一致の好評を得た。
全体的に高校生らしさを感じる作品が多い中、難しい語彙を無理に使って詩を創作しようとする作品もあったように感じる。それもまた創作の一つではあるが、難しい語彙を使うことにこだわることなく、様々な物事を経験する多感な高校生活において、自分らしさを活かした言葉で、詩を表現することに挑戦してほしい。

入賞作品【短歌の部】



最優秀賞
白塗りを 横山彩華(福井商業)
優秀賞
柳本量子(藤島)
夏休み 竹内和佳奈(武生)
松本 来(武生)
優良賞
大下恵亮(藤島)
川﨑乃愛(鯖江)
福谷恋美(若狭東)
小林千晃(藤島)
橋本ひなの(武生東)

【選考評】
 今回は、11校から45名の作品が集まった。まだコロナ禍は続いているものの、県をまたいでの往来や各種イベントが解禁されたことで、夏季休業中の生活にも少なからぬ影響があったことを感じ取れた。全体的に明るく、夏らしいイベントでの出来事や、思い出に残る場面を題材にした作品が目立った。
 最優秀の作品は、日常生活の中の一瞬を鋭く切り取った点が印象的であった。また、2首目の鮮やかな比喩表現にも作者の非凡な才能がうかがえた。
 選考を行って感じたこととしては、人目を引く言葉に安易に頼ることなく、わかりやすく、読み手に配慮した作歌を心がけてもらいたい。そのうえで、独自の感性が光る作品を期待したい。

入賞作品【俳句の部】



最優秀賞
泉 初音(丹生)
優秀賞
髙石悠人(藤島)
南越前町の水害より 諏訪泰士(藤島)
桑野聖弓(藤島)
優良賞
森 良紘(武生)
大倉美祐(藤島)
小林美羽(丹生)
西尾好花(科学技術)
風薫る 村中柚衣(福井商業)
藤田桃乃(羽水)

【選考評】
 今回は83作品が集まった。全体として個性的で意欲的な作品が多いと感じられた。一昨年、昨年同様、コロナ禍の影響が感じられるものがあったが、今年度はその生活の中で楽しみや喜びを見つける前向きで瑞々しい高校生らしい作品が多くみられた。
 最優秀賞である泉さんの作品は都会で過ごした時間が視覚的・聴覚的に表現されており、読者にその情景を想像させる。その情景から都会で初めて目にする光景に心躍らせる作者の素直な喜びが感じられた。優秀賞の髙石さんの作品は、入院から退院までの心情を、季語を巧みに用いて詠まれた連作である。諏訪さんの作品も連作で、こちらは南越前町の被災、そしてその復旧作業の大変な状況が、物を上手に用いて訴えられている。桑野さんの作品は数学の悩ましさが巧みに詠まれており、他の句も高校生活の一コマを素直に表現してあり、好感が持てた。
 良い作品に共通するのは、日常的な表現であっても、使い方や他の語との組み合わせによってその情景をありありと想像させる点であった。日頃から言語感覚を磨き、前向きに俳句づくりに励んでもらいたい。

作品集

各部門の入賞者のうち、最優秀賞・優秀賞については、氏名と入賞作品をそれぞれ掲載した作品集を作製し、高文連国語部会員および関係各高校に配布した。